名古屋高等裁判所金沢支部 昭和62年(ネ)11号 判決 1989年5月17日
控訴人
唐沢水産株式会社
右代表者代表取締役
唐 沢 修
控訴人
美善こと
橋 爪 謙 次
控訴人
小 浜 勇太郎
控訴人
輪 内 昇
右控訴人ら訴訟代理人弁護士
吉 川 嘉 和
同
鳥 毛 美 範
控訴人橋爪訴訟代理人弁護士
八十島 幹 二
被控訴人
日本原子力発電株式会社
右代表者代表取締役
岡 部 實
右訴訟代理人弁護士
溝呂木 商太郎
同
金 井 和 夫
主文
一 本件控訴をいずれも棄却する。
二 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人ら
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人唐沢水産株式会社に対し金三三五万二一四四円、同橋爪謙次に対し金一七三万八一二〇円、同小浜勇太郎に対し金九万四二二九円、同輪内昇に対し金九万四二二九円及び右各金員に対する昭和五六年五月一日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第一二審とも被控訴人の負担とする。
4 仮執行の宣言
二 被控訴人
主文同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因(控訴人ら)
1 当事者
(一) 控訴人唐沢水産株式会社(以下「控訴人唐沢水産」という)は、魚介類の仲買を業とし、主に金沢港の魚市場で仕入れて、主に福井市内にある福井市中央卸売市場(以下「福井市中央市場」という)と敦賀市にある福井県漁業協同組合連合会敦賀支所魚市場(以下「敦賀魚市場」という)、魚辻商店、魚岩商店等に卸し売りし、
(二) 控訴人橋爪謙次は、魚介類の仲買を業とし、主に金沢港の魚市場で仕入れて、敦賀魚市場及び敦賀市内にある釣屋商店、川口水産、魚新商店等に卸し売りし、
(三) 控訴人小浜勇太郎及び同輪内昇は、運送業として、控訴人唐沢水産に専属して、魚介類の運送に従事し、
(四) 被控訴人は、原子力を用いて発電業務を営む会社であり、福井県敦賀市の敦賀湾の一部を構成する浦底湾に臨んで原子力発電所(以下「本件発電所」という)を設置し、
ているものである。
2 本件事故の発生及びその実態
(一) 本件事故の発生
昭和五六年一月ころから同年四月半ばころの間にコバルト60を含む放射性物質が、本件発電所から公海である浦底湾へ漏出する事故(以下「本件事故」という)が発生し、右事故は、同年四月一八日、通商産業省から公表された。
(二) 本件事故の実態
(1) 資源エネルギー庁及び科学技術庁の報告内容
(イ) 本件事故のうち、通産省資源エネルギー庁及び総理府科学技術庁によって調査し、発表されているのは、昭和五六年三月八日に発生したとされている事故(以下「三・八事故」という)である。
(ロ) 資源エネルギー庁の報告によれば、三・八事故は、廃棄物処理旧建屋内のフィルタースラッジ貯蔵タンク室において、一四.五ないし一五立方メートルの放射性廃液がオーバーフローし、このうちおよそ一立方メートル程度が一般排水路に漏洩し、これに含まれる放射能は十数ミリキュリーから数十ミリキュリー程度と推定されている。
(ハ) 同庁の中間報告によれば、三・八事故の原因は、廃棄物処理旧建屋の設計・施行管理上の問題に主たる要因があり、これに運転管理面における人為的なミスが加わって発生したものとされている。
(2) 三・八事故の結果―浦底湾の汚染
(イ) 三・八事故により、まず本件発電所敷地内の一般排水路が放射性物質により汚染されたが、資源エネルギー庁の報告によれば、一般排水路中の放射能は、別表1のとおりである(単位はピコキュリー)。
(ロ) 浦底湾の海底土も放射性物質により汚染されたが、同庁の中間報告によると、被控訴人が昭和五六年四月一七日夜本件発電所の一般排水路の出口棚に堆積した土砂を採取して検査した結果、コバルト60が六一ピコキュリー、マンガン54が一〇ピコキュリー検出されており、これを福井県内の原発周辺の海底土から検出された一グラム当たりの最高値(コバルト60一.三ピコキュリー、マンガン54一.〇ピコキュリー)と比較すると、コバルト60で約四七倍、マンガン54で約一〇倍の汚染になり、放水口から放出される水中に含まれる放射能量のこれまでの測定実績との対比では、コバルト60が約一〇〇倍、マンガン54が約一〇〇〇倍ということである。
なお、科学技術庁の報告によると、福井県衛生研究所が同月一八日に海底土を採取し検査した結果は、別表2のとおりであった(単位はピコキュリー)。
(ハ) 科学技術庁の報告によると、福井県衛生研究所が同月八日から同月二二日の間にホンダワラを採取し検査したところ、別表3(単位はピコキュリー)のとおりであったが、八日採取分の検出値は、最近の測定値と比較して約一〇倍程度の高濃度のものであり、同衛生研究所が同月一八日にムラサキイガイ(肉)を採取し検査したところ、水試前採取分から〇.一〇ピコキュリー、明神崎採取分から〇.〇七ピコキュリーのコバルト60が検出されている。
なお、同報告によると、その他の魚介類について同月一八日以降に採取し検査したところ、いずれも検出限界値以下であったとされている。
(ニ) 以上の検出結果からみれば、三・八事故により浦底湾及びその海産物が、放射性物質により高濃度に汚染されたことは明らかであり、昭和五六年四月二一日付朝日新聞によれば、この点について「通産省によると、あふれ出た廃液の放射能濃度は一㏄あたり〇.〇一マイクロキュリーと見られる。これは、発電所放水口から外部へ放出される水についての排出基準の百万倍。実際に敦賀原発が放水している濃度の十億倍に当たるという。通産省では、廃液が排水路の雨水や雑排水などで薄められたとしても、相当に高い濃度のまま排水路出口から浦底湾に放出された、との見方が強い。」と報道されている。
ところで、右検出値は、放射性物質が一般排水路へ漏出した三月八日から一か月以上も経過してからのものであって、三・八事故による放射能汚染を正しく示すものではない。したがって、海産物について検出限界値以下との検出結果が報告されているが、実際にはそれにとどまるものでないことは明らかである。
(ホ) しかも、昭和五六年一月ころから同年四月ころの間に放射性物質が一般排水路へ漏出した原因を三・八事故に限定することには疑問がある。すなわち、被控訴人においてその余の事故の全容を隠している疑いがあり、現に資源エネルギー庁は、昭和五五年一二月六日にも類似の漏出事故があったことを公表している(同庁は、右事故により一般排水路へ漏洩した可能性を全く否定することはできないものの、漏洩の可能性は薄いと判断しているが、冬季にはホンダワラは成長が遅く、放射性物質をほとんど取り込まないから、環境モニタリング結果には有意な変化がなかったということによって漏洩を否定する根拠とはならず、右判断には疑問がある。)。このほか、昭和五六年一月一〇日のタービン建屋内の第四給水加熱器Bからの漏洩、同月一九日の廃棄物処理新建屋内の濃縮廃液貯蔵タンクからの廃液漏洩、同月二四日の第四給水加熱器Bからの再漏洩等の事故及び昭和五〇年九月以降の約一四件の放射性廃液洩れの事故が突き止められているが、それらの事故の実態は必ずしも明らかにされていない。そして、これらの事故の中には、三・八事故と同じ放射性廃棄物処理建屋のフィルタースラッジタンク室の廃液洩れ事故が三件含まれている。この三件について、被控訴人は、環境放射能の定期測定でその前後に異常が見つかっていないという理由で、外部への影響はなかったと主張しているが、外部に廃液が出なかった証明はない。
また、一般排水路のマンホールでの放射能汚染濃度に著しい高低差があり、被控訴人が放射性物質を含む廃水を意図的に一般排水路に投棄した疑いがあり、仮にそうでないとしても漏出経路について疑問がある。
これらの疑問は十分蓋然性があり、これによれば、一般排水路へ漏出した放射性物質の量並びに浦底湾の汚染濃度も前記各報告にとどまるものではないというべきである。現に資源エネルギー庁や科学技術庁が発表した放射能検出値については、当初から学者らによって疑問が表明され、京大農学部の漁業災害研究グループや原発反対福井県民会議の調査結果からも資源エネルギー庁等の報告以上の汚染があることが明らかにされているし、福井県衛生研究所がサザエやナマコからも通常の一〇倍のコバルト60が検出されたと報告していること等からみても、浦底湾は公表された以上に汚染されていたことは明らかである。
3 被控訴人の責任
被控訴人は、危険な放射性物質を産生する原子炉を管理する電気事業者であり、放射性物質を閉鎖された回路から漏出させてはならない業務上の注意義務があるのに、これを怠り、本件事故を発生させた。
4 控訴人らの損害
(一) 売上減少による損害
本件事故によって、敦賀魚市場を経由する魚介類をはじめ、福井県内での魚介類の売上は、本件事故公表後の昭和五六年四月一八日から少なくとも同年八月末ころまでの間(以下「本件期間」という)、前年同期と比較して激減し、そのため控訴人らは、右売上減少額に利益率一一.七パーセントを乗じて計算した結果、次のとおりの損害を被った(①は前年同期の売上額、②は本件期間の売上額、③はその差額、④は右差額に利益率を乗じた損害額)。
(1) 控訴人唐沢水産―三〇五万二一四四円
福井市中央市場関係
① 二六六九万二九六七円
② 一四四一万五五四三円
③ 一二二七万七四二四円
④ 一四三万六四五八円
敦賀魚市場関係
① 七〇一二万七一五〇円
② 六〇八六万一二八〇円
③ 九二六万五八七〇円
④ 一〇八万四一〇七円
魚辻商店関係
① 一五三九万四六八二円
② 一一一六万五二八七円
③ 四二二万九三九五円
④ 四九万四八三九円
魚岩商店関係
① 七六四万六二七〇円
② 七三三万二二五〇円
③ 三一万四〇二〇円
④ 三万六七四〇円
(2) 控訴人橋爪―一五八万八一二〇円
敦賀魚市場関係
① 九三四三万三六四六円
② 九二七五万二〇一八円
③ 六八万一六二八円
④ 七万九七五〇円
釣屋商店関係
① 五四六万五二六〇円
② 二九七万一〇四五円
③ 二四九万四二一五円
④ 二九万一八二三円
川口水産関係
① 八一二万九一五二円
② 二二二万五六七〇円
③ 五九〇万三四八二円
④ 六九万〇七〇七円
魚新商店関係
① 六〇〇万九三〇〇円
② 一五一万四九四五円
③ 四四九万四三五五円
④ 五二万五八四〇円
(3) 控訴人小浜―八万六二二九円
① 一七四万五〇〇〇円
② 一〇〇万八〇〇〇円
③ 七三万七〇〇〇円
④ 八万六二二九円
(4) 控訴人輪内―八万六二二九円
① 一七四万五〇〇〇円
② 一〇〇万八〇〇〇円
③ 七三万七〇〇〇円
④ 八万六二二九円
(二) 被控訴人が右損害金の支払を拒否しているため、控訴人らは本件訴訟代理人らに委任して、本件訴訟を追行せざるを得なくされたから、右各損害額の約一割相当額(控訴人唐沢水産に対し三〇万円、同橋爪に対し一五万円、同小浜及び輪内に対し各八〇〇〇円)を弁護士費用として賠償すべき義務がある。
(三) 慰謝料
控訴人らが本件事故によって損害を被ったことは明らかであるが、その損害額を客観的に把握することができないとするならば、控訴人らは、本件事故により商売上大きな損害を受け、しかもその損害を客観的に証明することが困難なため、著しい精神的苦痛を被ったから、前記(一)の損害を慰謝料として請求する。
(四) 禁反言の法理ないし信義則違反
(1) 控訴人らは、昭和五六年四月三〇日、被控訴人に対し、本件事故による損害賠償を請求したところ、被控訴人は、控訴人らに対し、損害の実情を把握したうえ、関係各位に公平妥当な賠償をする旨回答し、あわせて控訴人らとの交渉の猶予を申し出た。
(2) 被控訴人は、敦賀市が設置した「敦賀市原電事故補償額調停委員会」(以下「調停委員会」という)による調停を先行させ、右調停委員会において、昭和五六年一二月ころ、事故影響期間を同年四月から同年八月までとし、魚介類仲買商の場合の粗利益率を一一.七パーセント、事故影響率を七二パーセントとし、福井県内の魚介類仲買商に対し、合計一億九二五四万八〇〇〇円を支払う旨合意した。
(3) その後、被控訴人は、調停委員会での解決方式を前提として、控訴人唐沢水産に対し七九万五一八五円、同橋爪に対し三八万五二六四円の賠償額を提示し、同金額の支払を約束したが、それ以上の賠償は拒否した。
(4) 控訴人らは、損害額について被控訴人との交渉を重ねたが、被控訴人が右提示額に固執したため、やむなく昭和五八年五月九日、福井簡易裁判所に損害賠償の調停を申し立てた(昭和五八年(ノ)第一一二号)。しかし、被控訴人は、右調停においても前記提示額に固執したため、調停は不成立となり、本訴提起に至った。
(5) 右示談及び調停が成立しなかったのは、粗利益率や事故影響率について対立したからではなく、控訴人らの売上額(その算定方法も含めて)について対立したからである。
(6) 右経過から明らかなように、被控訴人は、当初から公平妥当な賠償を約し、敦賀市が設置した調停委員会においても、控訴人らとの示談交渉及び裁判所の調停においても、本件事故による控訴人らの損害を一定程度に認めて、その支払を約束し、控訴人らの同業者をも含む福井県内の他の業者に対し前記のような賠償をしながら、本訴段階にいたるや、控訴人らの損害を否定し、かつ、本件事故による損害賠償責任をも否定する態度に出ているが、被控訴人の右のような態度は、禁反言の法理に反するものであり、信義則上も許されない。
5 本件事故と損害との因果関係
(一) 本件事故により漏出した放射性物質は、公表されたような微量ではなく、また、公表されたとおりの量であったとしても、放射性物質は、人体に摂取された場合、食物連鎖と体内濃縮によって、急性障害・遺伝障害・晩発性障害などの様々な障害をもたらすものであり、人体に悪影響を及ぼすおそれがある。仮に公表されたとおり微量であり、かつ、人体に悪影響を及ぼすおそれのないものであったとしても、浦底湾の魚介類が汚染され、食品とするのに適さないのではないかと一般に疑わせるに足りる程度の放射性物質が排出され、このために一般市場に悪影響を与えたものである。すなわち、
(1) 本件事故のうち三・八事故は、通産省により昭和五六年四月一八日の早朝に発表され、直ちに新聞等により詳しく報道された。そして、資源エネルギー庁や科学技術庁などの調査の進展に応じて、その調査結果が詳しく報道されていった。
(2) その結果、一八日午後には名古屋中央卸市場で福井県漁連からの魚介類の入荷が拒否され、翌一九日には、この入荷拒否が金沢・大阪・京都・神戸・東京・横浜等の各市場に広がっていった。加えて、消費者は、福井県漁連からの魚介類を買い控えるようになった。右のような市場関係者及び消費者の行動は、浦底湾が放射性物質によって汚染されたという客観的事実を基礎にした危険性の認識に基づくものである。
(3) こうして福井県魚連からの魚介類は市場性を喪失もしくは減少し、控訴人らが取り扱っていた魚介類の市場性も喪失もしくは減少していった。
(4) なお、控訴人らの扱っているのは金沢産の魚介類であるが、市場関係者の入荷拒否や消費者の買い控えは、敦賀湾産の魚介類に限られたものではなく、敦賀市場(その後、福井県内の市場に広がった)を経由する魚介類に広がったものである。けだし、敦賀湾外でとれた魚介類も、敦賀湾を回遊した可能性があり、敦賀湾を回遊しなくとも敦賀湾からの汚染の流れに遭遇している可能性があり、かつ、魚介類そのものには、敦賀湾内でとれた魚介類かどうかを識別させる特徴が何もついていないのであるから、敦賀市場(後には福井県内の市場)を経由した魚介類が放射能によって汚染されたものとして、あるいはその可能性ありとして回避されたのは、むしろ当然というべきである。
(二) 第三者行為の介在と心理の問題
(1) 本件事故と福井県漁連からの魚介類の市場性の喪失の間には、新聞等の報道が介在しているが、①本件事故が発生しなければ、浦底湾が汚染されず、②浦底湾が汚染されなければ、汚染されたとの報道がなされなかったのであり、③報道がなされなければ、市場関係者や消費者が福井県漁連からの魚介類を拒否もしくは敬遠しなかったのであり、④したがって、控訴人らが取り扱っていた魚介類の市場性にも悪影響が及ばなかったのであって、いずれの点においても反復可能性があり、事実的因果関係があることは明らかである。
(2) 本件事故により魚介類が人体に悪影響を及ぼす程度に汚染されていなかったとしても、市場関係者や消費者の心理的反応の結果、市場性に悪影響が及んだものであるが、心理に媒介された因果関係は、自然法則的に同じ条件下で確実に同じ経過を反復するとは限らない場合にのみ、因果の法則の妥当しない領域とされるのであって、本件のように、本件事故から控訴人らの損害へと至る系列の各段階(右①ないし④)に反復可能性ないし条件関係が認められる場合には、特に問題とされるべきものではない。
(3) 安全宣言について
福井県は、昭和五六年四月二〇日に安全宣言を出したが、福井県漁連からの魚介類が市場で歓迎されず、敬遠され、買い叩かれた状態、消費者の買い控えは、これによって収束することなく、同年八月末ころまで依然として続いた。したがって、安全宣言は、本件事故と控訴人らの損害との事実的因果関係を中断するものではない。
(三) 以上のように、本件事故が発生し、資源エネルギー庁及び科学技術庁の報告で浦底湾の放射能汚染が明らかとなったことを直接の契機とし、右各報告が三・八事故の一か月以上も後の検出結果であること、右各報告に種々の疑問があったこと、その他にもいくつもの隠されていた事故が明らかとなり、被控訴人の事故隠しの体質が再三暴露されていったこと等の事情のもとに、これらの報道を媒介として、市場関係者や消費者の心理に少なからぬ影響を与えた結果、市場関係者や消費者が魚介類の取扱や購入を拒否もしくは敬遠する事態が発生したものであり、これは当然予測された事態であるから、本件事故とこれにより生じた損害との間には法的にも因果関係があるというべきである。仮に、右損害が通常生ずべき損害に当たらず、特別の事情による損害であるとしても、被控訴人において予見可能性があることは明らかである。
6 よって、被控訴人に対し、控訴人唐沢水産は三三五万二一四四円、同橋爪は一七三万八一二〇円、同小浜及び同輪内は各九万四二二九円及びこれに対する不法行為後である昭和五六年五月一日から支払いずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
二 請求原因に対する認否並びに被控訴人の主張
1 請求原因1の事実について
(一)ないし(三)の事実は知らない。
(四)の事実は認める。
2 同2の事実について
(一) (一)の事実は認める。
(二) 控訴人らは、本件事故に関して資源エネルギー庁及び科学技術庁が行った調査結果に疑問があるとし、被控訴人が一般排水路へ廃液を意図的に投棄したとか、第四給水加熱器の故障などの事象による周辺環境に対する放射性物質の漏出の可能性などを挙げて、あたかも資源エネルギー庁による調査結果以上の大量の放射性物質の漏出があったかのごとく主張するが、いずれも控訴人らの憶測に過ぎない。控訴人らの主張する事象によって、周辺環境に影響がなかったことは、福井県衛生研究所等の環境モニタリングによっても現実に確認されており、また、本件放射性物質の漏出量も、周辺環境への漏出という点で外部漏出のうち最も高い濃度が考えられる場所である一般排水路出口の土砂等から検出された具体的な放射性物質の濃度測定値によって、安全上全く問題とならないことが確認されている。
(三) 控訴人らは、科学技術庁及び福井県の調査結果により、海水及び魚介類から本件漏出放射能に起因する放射能は全く検出されておらず、海産食品には放射性物質による汚染がないことが本件漏出公表直後に発表、報道されているにもかかわらず、資源エネルギー庁及び科学技術庁の報告にあるホンダワラ、海底土等の汚染検査は、いずれも三月八日のフィルタースラッジ貯蔵タンクからの放射性廃液のオーバーフローから一か月以上も経過した後の検査結果であり、海産食品に汚染は生じていないとは結論できないと主張しているが、そもそもフィルタースラッジ貯蔵タンクの放射性廃液に含まれる放射性物質のうち半減期(放射性物質のもつ放射能がもとの半分になるまでの時間)の短い核種については、既に右タンク貯蔵保管中に減衰してしまっており、漏出に伴いホンダワラ、ムラサキイガイ、海底土から検出された残っていた核種は、コバルト60(半減期五.二年)、マンガン54(同二九一日)並びに検出限界値以下であったセシウム一三七(同三〇年)のようにそれぞれ半減期の長いものばかりであることから、控訴人ら主張の漏出と測定との期間の差が濃度に影響を与えるものではなく、漏出した放射性物質の濃度は科学技術庁、福井県の調査測定時点の濃度と大差はない。
(四) 控訴人らは、本件事故により浦底湾及びその海産物が放射性物質により高濃度に汚染されていたこと明らかであると主張するが、右事実は否認する。
科学技術庁等の測定結果により、一般排水口から出た放射性物質の拡散は限定されたものであり、魚介類に放射能汚染が認められず安全であること、その他の浦底湾奥部の非食性の海産生物(ムラサキイガイ、ホンダワラ―海水中のコバルトやマンガンをよく取り込む性質を有しているため、放射能調査の指標生物として用いられている)には、コバルト60、マンガン54が測定されているが、仮にこれらの海産生物を毎日食べたとしても、年間の被曝線量は約〇.〇七ミリレムで年間許容被曝線量の五〇〇ミリレムに比べ約一万分の一という小さな値で、人体への影響はないことが公表、報道されていたのである。
3 同3の事実については、認める。
4 同4の事実について
(一) 売上減少による損害は知らない。
(1) 控訴人唐沢水産の主張する損害について
(イ) 同控訴人は、本件事故により、昭和五六年四月から同年八月末までの間における魚介類の売上が、前年同期に比して、合計二六〇八万六七〇九円減少したと主張するが、右売上減少のうち、一二二七万七四二四円の売上減少が生じたとする福井市中央市場においては、昭和五六年三月二六日から本件事故が発表されるまでの僅かな期間で既に約二六八万円の売上減少が生じていた反面、発表直後から四月末までは逆に一〇〇万円以上の売上増があり、五月に若干の売上減少があったものの六月にはまた売上増となるなど、本件事故との関連で最も影響を受けてしかるべき時期に影響が生じることなく、むしろ時期を大きく外れた七、八月にその主張する売上減少の実に九〇パーセント近くを占める一一〇二万円(甲第3)の売上減少が集中している。
(ロ) また、九二六万五八七〇円の売上減少が生じたとする敦賀魚市場においても、昭和五六年の前年比年間売上減少約二五八〇万円の約六〇パーセントにあたる約一五九〇万円が既に本件事故発表前の一、二月に生じており、その主張する損害の論拠である売上減少が本件事故とどれ程の関わりがあるのか極めて疑わしい。なお、昭和六二年九月八日付福井県漁連の回答によれば、敦賀魚市場の昭和五六年度の取扱高は、五五、五七年度と比べて著しく減少しており、昭和五五年度との比較において、一月ないし三月分の約九四六〇万円の減少に比し、四月ないし八月分が約三億三五五〇万円減少しているということであるが、昭和五六年度の取扱高の減少は本件事故と関わりなく年度全体を通じた傾向であり、四月ないし八月分の減少も、本件事故との関連において最も影響を受けてしかるべき四、五月にではなく、影響の時期を外れた七、八月に右取扱高の減少の約八〇パーセントを占める二億六〇〇〇万円が集中しているのであって、本件事故との関わりを認めることはできない。
(2) 控訴人橋爪の主張する損害について
同控訴人は、本件事故により、昭和五六年四月から八月末までの間における魚介類の売上が、前年同期に比して合計一三五七万三六八〇円減少したと主張するが敦賀魚市場における売上減少と本件事故との間に関わりを認めることができないことは、前記のとおりであり、その他の商店関係についても同様に本件事故に起因する売上減少の事実を認めることはできない。
(二) 弁護士費用の損害及び慰謝料請求は争う。
(三) 禁反言の法理ないし信義則違反の主張は争う。
被控訴人が控訴人唐沢水産及び同橋爪に対し具体的金額の支払を約束したとか、利益率・事故影響率について合意した事実はない。被控訴人は、本件事故について何人に対しても法律上の損害賠償責任を認めたことはなく、本件事故により迷惑をかけた福井県や敦賀市民に対し、発電所の地元感情を考慮して、敦賀市の調停等により一定の方式に基づいた損失補償を行ったに過ぎず、控訴人らの請求に対しても被控訴人の右立場を明らかにした上で示談交渉に応じ、控訴人らの申し立てた調停で交渉しただけであって、交渉過程での被控訴人の言動が、示談等が不調になった後の本訴において被控訴人を拘束する理由はない。
5 同5の事実について
(一) 本件事故と控訴人らの主張する損害との間に相当因果関係があるとの主張は争う。
(二) 控訴人らは、本件事故が公表されたことにより、魚介類の入荷拒否や買い控えが生じたと主張するが、入荷拒否の動きを報じる新聞各紙によれば、これらはいずれも敦賀湾内でとれた魚介類に関するものであり、控訴人らが仕入れている金沢産の魚介類については、もともと本件事故による放射性物質の漏出に伴う汚染の可能性が皆無であり、本件事故による影響は認められず、公表直後の四月二〇日時点でも敦賀魚市場において全て普段どおりの値段でさばかれていた。
(三) 控訴人らの主張するような不法行為が成立するためには、少なくとも、海産物である魚介類を食品に供することに危険を感じさせる程度の放射性物質の漏出が必要であるというべきところ、控訴人らは、放射性物質の場合は、たとえ微量でも、人体に摂取された場合、食物連鎖と体内濃縮によって急性・遺伝・晩発性の各障害をもたらすと主張するが、自然界のあらゆるところに放射線は存在しており、人類が大昔から自然放射線を絶えず受け続け、あるいは飲食物とともに天然の放射性物質を身体の中に取り込み続けながら今日までその中で生活していることは周知の事実であり、どの程度の放射線がどのような影響を与えるかについて、長年にわたる症例及び研究をもとに国際放射線防護委員会の勧告に基づきわが国でも許容線量が定められているのであって、これらの法令等に基づく基準値以下の微量の放射線、特に本件事故によって検出された程度の量が安全上全く問題にならず、消費者に対し、魚介類を食品に供することに危険を感じさせる程度のものでないことは明らかである。
(四) しかも、本件事故の公表直後から科学技術庁及び福井県によって、敦賀湾の魚介類には汚染が生じていない旨公表・報道されていたのであるから、仮に控訴人らの主張する損害があったとしても、右損害と本件事故との間には、相当因果関係は存在しない。
第三 証拠<省略>
理由
一当事者について
1 <証拠>によれば、次の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。
(一) 控訴人唐沢水産は、昭和四六年に設立された海産物の販売・料理飲食店業・旅館の経営等を目的とする会社であるが、代表者が個人で経営をしていた昭和三八年ころから鮮魚の仲買を業とし、北陸近海の魚介類が水揚げされる金沢港及び全国・世界各国から入荷する金沢中央市場において、主に鮮魚(仕入の約九割)の仕入を行い、これを関西、中部、北陸三県、上信越等に卸し売りしているものであり、このうち福井県内では、福井市内にある福井市中央市場(取引先は福井中央魚市株式会社)、敦賀市内にある敦賀魚市場、魚辻商店、魚岩商店等に卸し売りしている。
(二) 控訴人橋爪は、石川県河北郡において、昭和二九年ころから鮮魚の仲買を業とするものであり、金沢港及び金沢中央市場で鮮魚を仕入れ、二割程度を地元で販売するほかは、敦賀市内の敦賀魚市場、釣屋商店、川口水産、魚新商店等に卸し売りしている。
(三) 控訴人小浜及び同輪内は、運送を業とするものであり、控訴人唐沢水産の専属として、同控訴人が福井県内に出荷する魚介類の運送に従事している。
2 被控訴人が原子力を用いて発電業務を営む会社であり、福井県敦賀市の敦賀湾の一部を構成する浦底湾に臨んで原子力発電所を設置しているものであることは、当事者間に争いがない。
二本件事故の発生と控訴人らが取り扱う魚介類の放射能汚染について
1 昭和五六年一月ころから同年四月半ばころの間にコバルト60を含む放射性物質が、本件発電所から公海である浦底湾へ漏出する事故が発生し、同年四月一八日、通商産業省から公表されたことは、当事者間に争いがない。
2 <証拠>によれば、次の事実が認められる。
(一) 本件発電所は、我が国最初の商業用・沸騰水型原子力発電所であり、昭和四五年三月から営業運転を開始したが、使用開始後、フィルタースラッジの発生量が当初の予想より多量であったことに伴うフィルタースラッジ貯蔵タンク等の増設等合計五回の増設工事がなされたため、当初廃棄物処理旧建屋外にあった一般排水路(雨水等の排水用であり、放射性廃棄物が含まれる可能性はない)が、No.1マンホールとNo.4マンホールの間で同建屋の地下を通過することになった。
(二) 本件発電所において、放射性廃棄物を含むフィルタースラッジをサージタンクから廃棄物処理旧建屋内にある貯蔵タンクに移送したときは、両タンク間の配管を復水タンクからの放射能の少ない約四〇〇リットルの水を使用し、約五分間洗浄することになっているところ、昭和五六年三月七日、第一回目の移送をしたA班運転員は、洗浄の際、洗浄系弁を開いても洗浄系弁の開閉状態を示す表示灯は緑(閉を示す)のままであり、リミットスイッチが不調であることを発見したが、保修依頼票を発行することなく、約五分間の洗浄を行った。
その後第二回目の移送(貯蔵タンク(D)へ移送、移送後の同タンクの水位レベルは八八パーセント)を行ったB班運転員は、二一時三五分ころ、再び洗浄系弁を開き、洗浄を開始したが、C班との直引継が間近であったため、洗浄作業中であることを忘れ、二二時にC班に引き継いだ。
C班運転員は、二四時に直引継直後のパトロール、翌八日八時ころに直引継前のパトロールを実施したが、異常を発見しなかった。八時二五分に貯蔵タンク室のサンプ水位高・高によりサンプポンプが起動したが、その場合、新建屋内制御盤に表示灯がつき、警報が鳴るシステムになっているところ、直引継のため新建屋内制御室に誰もいなかった。
引き継ぎを受けたC班運転員は、貯蔵タンク(D)の水位レベルを確認するのを忘れ、同班運転員から異常がないと聞いて同タンクの水位レベルを前日値の八八パーセントと記入した(警報は確認のボタンを押さない限り鳴りやまないようになっているが、警報が鳴っていたか、誰かが確認ボタンを押したか不明)。
その後一一時ころ、A班運転員がパトロール中に旧建屋一階階段付近床に漏洩水が流れてきているのを発見し、洗濯廃液濾過装置室から流出していることを確認し、一一時三〇分ころ、貯蔵タンク(D)の水位計が一〇〇パーセントを超えていることに気付き、同タンクの入口弁を閉鎖し、一一時四〇分ころ洗浄系弁が開かれていることが分かってこれを閉鎖し、その後、吸収布で堰を作り、漏洩拡大防止処置等を施し、床に流出した廃液をチリ取で汲み取り、廃液中和タンクに回収し、汚染範囲の約二二〇〜二三〇平方メートルの区域に放射線管理バリヤを設定し、三月九日から四月一五日にかけて除染作業を行った。
(三) 本件発電所には、資源エネルギー庁から運転管理専門官が派遣されているが、被控訴人は右事故を運転管理専門官に報告していなかったところ、福井県衛生研究所が昭和五六年四月八日に浦底湾明神崎F地点で採取したホンダワラから平常値より高い放射能が検出され、その連絡を受けた被控訴人が、同月一六日に本件発電所放水口対岸付近(約七〇〇メートル離れている)に自生するホンダワラの放射能分析を行った結果、最近の測定値の約一〇倍のコバルト60等が検出され、一般排水路出口棚に堆積していた土砂からも一グラム当たりコバルト60が六一ピコキュリー、マンガン54が一〇ピコキュリー(<証拠>によれば、福井県内の原発周辺の海底土から検出された最高値よりコバルト60が四七倍、マンガン54が一〇倍、本件発電所の放水口から排出される放射能量のこれまでの測定実績との対比ではそれぞれ一〇〇倍・一〇〇〇倍になることが認められる)検出されたため、同月一八日未明に通産省に報告した。
検出箇所が本来このレベルの放射性物質が検出されるはずのない一般排水路出口棚であったことから、事態を重視した資源エネルギー庁は、職員を派遣し、被控訴人の実施する分析及び調査に立ち会わせたところ、一般排水路の各マンホールから別表1のとおりコバルト60等の放射能が検出された。特に原子炉建屋に隣接する放射性廃棄物処理旧建屋内にあるNo.2マンホールの堆積泥からは一グラム当たりコバルト60が九九四一ピコキュリー、マンガン54が一四五八ピコキュリーと最も高い放射能が検出された。
このような結果が出た後、被控訴人は現地の運転管理専門官に三月八日の事故に関する説明メモを提出し、これを受けた資源エネルギー庁は、電気事業法一〇七条の立入検査権限に基づき、同月二〇日から本格的な調査を開始した。
(四) 資源エネルギー庁は、本件発電所の施設設置に関する記録、運転日誌等の各種記録類、関係機器、建屋の実地調査、漏洩実証試験等を実施し、分析した結果、放射性物質の外部への漏洩原因は、三月八日にフィルタースラッジ貯蔵タンク室で発生したオーバーフロー水が同タンク室と洗濯廃液濾過装置室の間にある壁を貫通する押込管路を通じて右濾過装置室に至り、その一部が同室のコンクリート床にある隙間を通って地下の一般排水路に混入し、一般排水に混じって浦底湾に流入したものであり、オーバーフロー量は一四.五ないし一五立方メートル、回収量は約一四立方メートル、一般排水路に漏洩した量はおよそ一立方メートルであり、これに含まれる放射能は安全側に評価し十数ミリキュリーから数十ミリキュリー程度と推定した。
(五) そして右調査結果に基づき、通産省は、廃棄物処理旧建屋内における放射性廃液の漏洩に関し、移送ラインの洗浄に際して手順書通りの操作が行われなかったこと、サンプ水位高・高の警報装置の作動を適切に監視できなかったこと、運転員が洗浄系弁の開閉表示装置の異常を発見しながら直ちに当直長に報告しなかったこと、漏洩発見後放射線管理課長に対する速やかな連絡が行われなかったこと、放射線管理課長が放射線異常を認めながら所長に報告しなかったこと等並びに三・八事故以前に発生した第四給水加熱器の漏洩に関しても、保修のために原子炉の停止等の適切な措置をとらなかったこと、保修課長が保修時期について発電課長と協議せず、コーキング等の処置について所長の承認を得なかったこと等、運転上の留意事項、異常を発見した場合のとるべき処置、定められた報告、保修手順等の遵守義務に違反しており、被控訴人の保安管理体制は極めてずさんであり、これがこれまでの一連の事故の大きな要因を形成したとして、原子炉等規制法三三条二項四号に基づき六か月間原子炉の運転の停止を命じ、併せて本件発電所における一連の事故は、国民の原子力発電に対する信頼を裏切るものとして極めて遺憾であるとして、旧廃棄物処理施設の改造、汚染土壌の回収、廃棄物処理旧建屋内の一般排水路の閉鎖等を指示し、地元における補償問題等に誠意をもって対応するよう指導した。
(六) 一方、科学技術庁は、福井県とともに本件発電所の放射能漏洩に係る迅速環境調査(放射能水準を迅速に把握するための測定方法で、検出限界値は通常の二〇分の一程度の測定精度となる)を実施し、その評価結果を同年四月一九日、二〇日、二三日に順次公表した(公表資料は別添1ないし3のとおり)。
その間、迅速環境調査を補完するものとして、五月八日までに浦底湾及び敦賀湾で採取した海洋環境資料について測定分析精度を高めた詳細環境調査を実施したところ、福井県衛生研究所が四月一八日に海底土を採取した結果は別表2、同月八日から二二日の間にホンダワラを採取し検査した結果は別表3(ただし、色ヶ浜での採取日は四月一五日)のとおりであり、同月一八日に採取したムラサキイガイ(肉・一グラム)からも水産試験場前採取分から〇.一〇ピコキュリー、明神崎採取分から〇.〇七ピコキュリーのコバルト60が検出されているが、同日以降に採取したその他の魚介類についてはいずれも検出限界値以下であった。
科学技術庁は、以上の環境調査結果によれば、ホンダワラの測定分析結果には、浦底湾中央部から本件発電所寄りの東岸で漏洩放射能の影響が出ているが、浦底湾口ではその影響が認められないこと、明神崎F地点のホンダワラの測定分析結果は、四月八日以降、採取された試料中の放射能の減少傾向を示していること、海底土については、一般排水路出口近辺の限定された範囲にその分布がとどまっていることから、一般排水路から出た放射性物質の拡散は限られていると判断し、また、調査対象となった魚介類の海産食品には、漏洩放射能による汚染は生じていないから、海産食品の摂取による漏洩放射能の影響はないとし、仮定として、四月八日に明神崎F地点で採取された非食性のホンダワラ(コバルト60〇.四九ピコキュリー、マンガン54〇.一五ピコキュリー)や四月一八日に水産試験場前で採取されたムラサキイガイ(コバルト60〇.〇八ピコキュリー)を毎日食べ続けたとしても年間全身被曝線量は約一〇〇分の四ミリレム(ただし、公表された別添1によれば、〇.〇七ミリレム)であり、国際放射線防護委員会が勧告している一般公衆の年間の許容被曝線量限度(全身に対して五〇〇ミリレム)の約一万分の一以下となり、安全上全く問題となるものではないと結論した。
3 控訴人らは、科学技術庁及び福井県の環境調査結果による検出値は、放射性物質が漏洩した三月八日から一か月以上も経過してからのものであるから、三・八事故による放射能汚染を正確に示すものではないと主張するが、前掲各証拠によれば、ホンダワラ、ムラサキイガイ、海底土から検出されたコバルト60・マンガン54・セシウム一三七の半減期はそれぞれ五・二年、二九一日、三〇年であることが認められ、したがって、一か月程度の差で有意差を認めることはできない。
また控訴人らは、放射性物質が一般排水路に漏出した原因を三・八事故に限定することには疑問があると主張するところ、本件発電所において三・八事故以外にも事故が発生していながら、被控訴人がこれを公表していなかったことは、前記資源エネルギー庁の調査において明らかにされているが、科学技術庁及び福井県は、昭和五六年四・五月当時の実態調査を行った結果を発表しているのであるから、右調査による検出値に三・八事故以外の事故により漏洩した放射能が含まれていたとしても、当時の浦底湾の放射能汚染状況を示すことに変わりはない。
さらに控訴人らは、一般排水路のマンホールでの放射能汚染濃度に著しい高低差があり、被控訴人が放射性物質を含む廃水を意図的に投棄した疑いがあり、漏出経路にも疑問があると主張するところ、一般排水路のマンホールから検出された放射能濃度は前認定のとおり著しく濃度差があるが、だからといって、これが科学技術庁等の環境調査結果に対する疑問に結びつくものとは言えず、控訴人らの右各主張は採用できない。
もっとも、<証拠>によれば、昭和五六年一一月三〇日に開催された福井県原子力環境安全管理協議会において、福井県衛生研究所は、同年六月一〇日に一般排水路出口付近で採取したナマコから〇.〇三ピコキュリー(生一グラム当たり)、七月二二日に放水口から約一キロメートル離れた浦底湾から採取したサザエから〇.一ピコキュリー(同)のコバルト60が検出されたことを報告している。しかし、この結果は通常の一〇倍の値であるが、毎日四〇〜五〇グラムずつ食べても年間許容総量五〇〇ミリレムの一万分の一以下で人体に影響はなく、問題はない。また、科学技術庁が行った被曝線量の試算は、コバルト60〇.四九ピコキュリー、マンガン54〇.一五ピコキュリーの試料に基づくものであるが、別添3によれば、四月二二日に雑排水口で採取されたホンダワラからはコバルト60が一一一ピコキュリー、マンガン54が四〇ピコキュリー検出されていると報告されているが、同資料(乙第二号証)によれば、採取場所による違いであって、これによって、浦底湾全体が高濃度に汚染されたとは認められないから、前認定に反するものではない。
4 すると、本件事故により漏洩した放射能による汚染区域は、浦底湾内に限られ、しかも魚介類については、わずかにホンダワラ、ムラサキイガイ、ナマコ、サザエに検出されたに過ぎず、その他の魚介類には検出されておらず、右放射能が検出された分についても、仮にこれを毎日食べ続けたとしても、人体に影響がない程極めて微量であって、結局、本件事故によって敦賀湾で獲れた食用魚介類は殆ど影響はなく、したがって、当然のことながら、控訴人らが扱う金沢産魚介類は無影響であったと認めるのが相当である。
控訴人らは、魚介類の回遊性をいうが、前認定の資料に照らせば、浦底湾に一時的に回遊した魚介類に、人体に影響ある汚染が生じたとは到底認められないから右主張は理由がない。
すると、控訴人らの取り扱う魚介類に放射能汚染が生じたことを理由としては控訴人らの本訴損害賠償請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がないことになる。
三本件事故後の控訴人らの売上高の減少について
1 本件事故に関する報道状況について
<証拠>によれば、昭和五六年四月一八日未明に被控訴人から通産省に本件発電所の一般排水路出口から放射性物質が検出されたことが報告され、同日午前五時に資源エネルギー庁からその事実が発表され、同日の夕刊以後資源エネルギー庁・科学技術庁・福井県等の調査結果、本件事故の状況や本件事故の影響等について連日のように報道がなされたことが認められる。
前記各新聞報道によれば、本件事故の公表・報道により、昭和五六年四月一九日から順次、名古屋・東京・大阪・京都・神戸・金沢・舞鶴等の卸売市場が、仲買業者等に敦賀産をはじめ福井県産の魚介類の集荷自粛を指導したこと、同月一九日に敦賀市が福井県衛生研究所の分析結果をもとに敦賀産の魚介類の安全宣言を行い、続いて翌二〇日に福井県も安全宣言をしたが、その後も集荷自粛をする県外市場があり、二一日に福井県漁連が県外市場に出掛けて自粛解除を申し入れ、二三日までに県外市場の自粛は解除されたが、この間はもとより、その後においても、敦賀産の魚介類の価格の暴落・取引量の低迷が続き、海と魚を売り物にする敦賀湾一帯の観光地で旅館・民宿のキャンセルが相次ぐなどの打撃を与えたことが認められる。
2 以上によると、本件事故により、敦賀産の魚介類について、消費者の買い控え現象が生じ、価格の下落による影響が出たことが認められる。しかしながら、石川県沖などで獲れた金沢産魚介類についても買い控え現象が起きたとまでは認められない。
控訴人らは、敦賀市場を経由するものは、敦賀産と同列に扱われると主張する。そして、前記甲第十九号証によると、敦賀で水揚げされれば、他の漁場で獲れた魚も取引上は敦賀産と扱われることが認められるが、前記一認定によると、控訴人らは金沢で水揚げされた魚介類を、敦賀まで陸送して販売していたと認められるから、控訴人ら取扱いの魚が敦賀産とみなされる状況にあったとは到底認められない。
また、控訴人らは、魚介類には産地の表示はできない、またそれをしても信用されないなどと主張するが、<証拠>によると、本件事故発表後、敦賀市場において、敦賀産あまえびについては買手はつかなかったが、金沢産あまえびは通常の値段で取引されていた事実が認められるから、魚介類には産地表示ができないとか機能していなかった旨の主張は理由がない。
3 控訴人らは、以上の状況にも拘らず、控訴人らの売上は事故後減少したと主張する。そこで、控訴人らの右売上高についてみることとする。
(一) 福井県漁業協同組合連合会に対する調査嘱託の結果(昭和六二年九月八日付回答・別表4関係、昭和五九年一〇月一五日付、昭和六二年六月一一日付及び昭和六三年一〇月四日付各回答・別表4・5関係)、福井市役所に対する調査嘱託の結果(昭和六二年一二月七日付回答・別表7関係、昭和六三年一〇月二八日付回答・別表8関係)、<証拠>によれば、控訴人唐沢水産及び同橋爪が鮮魚等を卸し売りしていた敦賀魚市場等の昭和五五年から五七年までの鮮魚等の取扱高は別表4ないし13のとおりであり、本件事故の発生した昭和五六年度を基準とした昭和五五年度及び昭和五七年度との比較も右各表に記載したとおりと認められる。
(二) そこで、右別表4ないし13によって判断すると次のとおりとなる。
(1) 控訴人唐沢水産について
(福井市中央市場関係)
別表8によれば、右市場における同控訴人の昭和五五年度の四月二〇日から八月三一日までの鮮魚等の取扱高は二三一九万六六七八円、昭和五六年度の同期間の取扱高は一三五八万一八〇五円、昭和五七年度のそれは三一七一万二二七〇円であり、昭和五六年度は前年比四一.四パーセント、翌年比五七.二パーセント、いずれも減少していることが認められる。
しかし、同表から明らかなとおり、右減少の大部分は七・八月に生じたものであって、本件事故の公表された後の四月分の取扱高は前年比で七七.六パーセントも増加し、五月に六.二パーセント減少しているものの、六月には一〇.六パーセント増加している。
また、別表7にみられるように右市場における鮮魚の全取扱高をみても、五月に数量・金額とも減少しているが、減少巾は小さく、その他は金額・単価とも上昇しているのであって、本件事故による影響を顕著に示しているとは言い難い。そうすると、同市場に関しては、本件事故後の売上減少が顕著であるとは認められない。
(敦賀魚市場関係)
別表4によれば、敦賀魚市場全体の四月から八月までの取扱高は、昭和五五年度は一一億三一九六万四九一二円、昭和五六年度は七億九六四四万二三二〇円、昭和五七年度は九億二〇二五万九〇四五円であり、昭和五六年度は前年比二九.六パーセント、翌年比一三.五パーセントの減少がみられる。しかし、昭和五六年度は一月から三月までも大きく減少しており、四・五月の減少の原因は明確ではない。
そして、別表5によれば、同控訴人の関係では、昭和五六年四月二〇日から同月末までの間に前年比三二九万五七三〇(五八.六パーセント)、五月に五〇五万一九二〇円(四六.八パーセント)それぞれ減少しているが、同年一・二月にも同規模の減少がみられ、事故前の月別売上高が常に前年と同水準を保って推移していたか疑問がある。
(魚辻商店関係)
別表9によれば、魚辻商店関係の取扱高は、昭和五六年四月分(二〇日以降)前年比二八万八三一一円(五二パーセント)、五月分同八七万三五七五円(七〇.六パーセント)、六月分同一三〇万七二六二円(五四.八パーセント)、七月分同一〇九万一五九二円(二七.九パーセント)、それぞれ減少していることが認められる。
(魚岩商店関係)
同商店関係の取扱高は、別表10のとおりであり、本件事故による影響が顕著に表れているとは言い難いから、同商店に関する損害については、これを認めることができない。
(2) 控訴人橋爪について
(敦賀魚市場関係)
敦賀魚市場全体の取扱高については、前認定のとおりである。
そして、別表6によれば、同控訴人の関係では、昭和五六年四月二〇日から同月末までの間に前年比一八六万二二五七円(二八.八パーセント)、五月に二六〇万〇四六九円(一八.四パーセント)それぞれ減少している。しかし、同年一・二月及び一一・一二月にも同規模の減少がみられ、四・五月の減少が、事故の影響かどうか必ずしも明らかでない。
(釣屋商店関係)
別表11によれば、釣屋商店関係の取扱高は、昭和五六年四月分(二〇日以降)前年比二三万〇五九〇円(六六パーセント)、五月分同一一四万七七九五円(八一.八パーセント)、六月分同六二万〇一〇〇円(四九.一パーセント)、七月分同四〇万五九〇〇円(三五.八パーセント)それぞれ減少している。
(川口水産関係)
別表12によれば、川口水産関係の取扱高は、昭和五六年四月分(二〇日以降)前年比二一万三〇〇〇円(一〇〇パーセント)、五月分同一四五万八八六二円(九三.九パーセント)、六月分同一五五万三五九〇円(九三.一パーセント)、七月分同一二九万九四〇〇円(八三.八パーセント)それぞれ減少している。
(魚新商店関係)
別表13によれば、魚新商店関係の取扱高は、昭和五六年四月分(二〇日以降)前年比三一万一六八五円(九四.五パーセント)、五月分同一五八万四一〇五円(九五.九パーセント)、六月分同二四万三三二五円(七二.八パーセント)、七月分同八八万四一〇五円(九一.〇パーセント)、八月分同五九万四一三五円(五六.八パーセント)それぞれ減少している。
(三) 控訴人小浜及び同輪内について
右控訴人らの主張する損害に関しては、甲第五号証(「敦賀行き運賃」と題するメモ)が提出されているだけであり、原審における控訴人唐沢水産代表者本人尋問の結果によれば、右メモは同控訴人において作成したものであるというけれども、各別の運送料の明細もなく、右メモのもとになった資料も提出されておらず、右メモのみによって売上高の減少があったと認めることはできない。
(四) 以上によると、本件事故後控訴人唐沢水産及び同橋爪について、売上高の減少が一部認められるというべきであるが、売上高は、総漁獲量とも関係があるのであって、事故による影響かどうか、売上数値の月別比較からは必ずしも明らかではない。
四控訴人唐沢水産及び同橋爪の売上減少と本件事故との因果関係について
1 前認定のとおり、本件事故の発生とその公表及び報道を契機として、敦賀産の魚介類の価格が暴落し、取引量の低迷する現象が生じたものであるところ、敦賀湾内の浦底湾に放射能漏れが生じた場合、漏出量が数値的には安全でその旨公的発表がなされても、消費者が危険性を懸念し、敦賀湾産の魚介類を敬遠したくなる心理は、一般に是認でき、したがって、それによる敦賀湾周辺の魚介類の売上減少による関係業者の損害は、一定限度で事故と相当因果関係ある損害というべきである。
2 控訴人唐沢水産及び同橋爪についても、前認定のとおり、事故による影響かどうか必ずしも明らかではないものの、一部売上減少が生じたことが窺われるが、敦賀における消費者が、敦賀湾から遠く離れ、放射能汚染が全く考えられない金沢産の魚まで敬遠し、更にはもっと遠隔の物も食べたくないということになると、かかる心理状態は、一般には是認できるものではなく、事故を契機とする消費者の心情的な判断の結果であり、事故の直接の結果とは認め難い。金沢産の魚も心情的には不安であるとの理由で賠償を命ずるものとすれば、金沢における消費の低下も是認しなければならなくなり、損害範囲はいたずらに拡大することとなる。
3 したがって、右控訴人らの売上高が本件事故後減少したとしても、消費者の個別的心理状態が介在した結果であり、しかも、安全であっても食べないといった、極めて主観的な心理状態であって、同一条件のもとで、常に同様の状態になるとは言い難く、また一般的に予見可能性があったともいえない。すると、本件浦底湾における人体に影響のない微量の放射能漏れと敦賀の消費者の金沢産魚介類の買い控えとの間には、相当因果関係はないというべきである。
控訴人らの、本件事故と控訴人らの売上高減少との間には反復可能性がある、あるいは、その結果は、被控訴人にとって予見可能性があったとの主張は、いずれも採用できない。
五控訴人らは、被控訴人が本訴以前に賠償義務あることを認めていたと主張するが、控訴人らに対し、個別具体的に賠償義務を認めていた事実を認めるに足る証拠はない。
また、裁判外で一定限度の金員の支払を提示しながら、合意が成立しなかったため本訴となるや、全く責任を否定するのは信義則に反すると主張するが、補償金支払の合意と賠償義務を肯定し支払を命ずる判決を受けるのとは、法律上も事実上も大きな差異があるから、本訴で被控訴人が法的責任を否定しても、その態度をもって、信義則に反するということはできない。
控訴人らの右主張は理由がない。
六すると、控訴人らの本訴請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官井上孝一 裁判官井垣敏生 裁判官紙浦健二)
別紙表1~3<省略>
表4 【昭和55・56・57年度の月別取扱高及びその比較】
〔敦賀魚市場全体〕
(単位:円)
55年度
56年-55年
増減率
56年度
56年-57年
増減率
57年度
1月
133,485,021
- 50,070,842
-37.5
83,414,179
- 46,022,126
-35.6
129,436,305
2月
124,312,938
- 10,397,886
- 8.3
113,915,052
- 5,903,143
- 4.9
119,818,195
3月
170,555,183
- 34,121,517
-20.0
136,433,666
- 9,313,970
- 6.4
145,747,636
4月
167,753,218
- 31,782,093
-18.9
135,971,125
- 6,464,912
- 4.5
142,436,037
5月
183,817,966
- 23,634,930
-12.9
160,183,036
- 12,362,238
- 7.2
172,545,274
6月
171,889,051
- 19,800,168
-11.5
152,088,883
- 38,127,113
-20.0
190,215,996
7月
327,992,195
- 144,229,978
-44.0
183,762,217
- 41,387,424
-18.4
225,149,641
8月
280,512,482
- 116,075,423
-41.4
164,437,059
- 25,475,038
-13.4
189,912,097
9月
207,039,212
+ 52,625,788
+25.4
259,665,000
+ 69,294,044
+36.4
190,370,956
10月
297,994,193
- 90,109,949
-30.2
207,884,244
- 40,236,918
-16.2
248,121,162
11月
279,463,742
+ 26,551,900
+ 9.5
306,015,642
- 206,946,604
-40.3
512,962,246
12月
257,753,750
+ 87,081,149
+33.8
344,834,899
- 30,075,997
- 8.0
374,910,896
小計
1,131,964,912
- 335,522,592
-29.6
796,442,320
- 123,816,725
-13.5
920,259,045
合計
2,602,568,951
- 353,963,949
-13.6
2,248,605,002
- 393,021,439
-14.9
2,641,626,441
(小計は,4月から8月分の合計を示す)
(増減率は,56年度を基準として,55年度及び57年度との増減を%で示す.小数点第2位を四捨五入)
表5 【昭和55・56・57年度の月別取扱高及びその比較】
〔敦賀魚市場・控訴人唐沢水産分〕
(単位:円)
55年度
56年-55年
増減率
56年度
56年-57年
増減率
57年度
1月
16,140,750
- 8,013,640
-49.6
8,127,110
- 2,084,305
-20.4
10,211,415
2月
16,852,300
- 7,877,330
-46.7
8,974,970
- 3,530,680
-28.2
12,505,650
3月
12,131,825
+ 178,785
+ 1.5
12,310,610
+ 848,085
+ 7.4
11,462,525
4月
11,168,045
5,619,840
16,787,885
- 1,954,385
- 3,295,730
- 5,250,115
-17.5
-58.6
-31.3
9,213,660
2,324,110
11,537,770
+ 260,557
+ 2.3
11,277,213
5月
10,796,760
- 5,051,920
-46.8
5,744,840
- 4,660,990
-44.8
10,405,830
6月
10,651,835
- 785,150
- 7.4
9,866,685
- 1,565,080
-13.7
11,431,765
7月
16,846,350
+ 2,371,445
+14.1
19,217,795
+ 3,496,780
+22.2
15,721,015
8月
15,044,320
- 550,130
- 3.7
14,494,190
+ 4,111,505
+39.6
10,382,685
9月
9,779,180
- 4,073,220
-41.7
5,705,960
- 4,357,935
-43.3
10,063,895
10月
9,307,385
+ 2,661,160
+28.6
11,968,545
+ 3,941,995
+49.1
8,026,550
11月
14,477,720
- 2,481,190
-17.1
11,996,530
+ 346,200
+ 3.0
11,650,330
12月
22,483,075
+ 3,077,670
+13.7
25,560,745
+ 3,703,410
+16.9
21,857,335
小計
58,959,105
- 7,311,485
-12.4
51,647,620
合計
171,299,385
- 25,793,635
-15.1
145,505,750
+ 509,542
+ 0.4
144,996,208
(4月分の上段は19日以前の分,中段は20日以後の分,下段は4月分合計を示す)
(小計は,4月20日から8月31日までの合計を示す)
(増減率は,56年度を基準として,55年度及び57年度との増減を%で示す.小数点第2位を四捨五入)
表6 【昭和55・56・57年度の月別取扱高及びその比較】
〔敦賀魚市場・控訴人橋爪分〕
(単位:円)
55年度
56年-55年
増減率
56年度
56年-57年
増減率
57年度
1月
20,614,630
- 8,538,090
-41.4
12,076,540
- 5,796,010
-32.4
17,872,550
2月
24,832,530
- 12,355,890
-49.8
12,476,640
- 1,849,165
-12.9
14,325,805
3月
15,521,361
- 1,231,074
- 7.9
14,290,287
- 1,664,287
-10.4
15,954,574
4月
13,509,796
6,461,715
19,971,511
- 72,681
- 1,862,257
- 1,934,938
- 0.5
-28.8
- 9.7
13,437,115
4,599,458
18,036,573
+ 556,163
+ 3.2
17,480,410
5月
14,362,955
- 2,640,469
-18.4
11,722,486
- 3,223,960
-21.6
14,946,446
6月
14,211,895
+ 1,663,690
+11.7
15,875,585
- 1,271,015
- 7.4
17,146,600
7月
21,434,115
+ 606,770
+ 2.8
22,040,885
- 1,724,335
- 7.3
23,765,220
8月
23,453,170
+ 1,623,319
+ 6.9
25,076,489
+ 5,864,964
+30.5
19,211,525
9月
12,223,750
+ 98,685
+ 0.8
12,322,435
- 2,789,975
-18.5
15,112,410
10月
11,302,420
+ 1,709,240
+15.1
13,011,660
+ 2,810,625
+27.6
10,201,035
11月
19,996,270
- 4,429,260
-22.2
15,567,010
- 1,595,756
- 9.3
17,162,766
12月
35,791,970
- 7,134,270
-19.9
28,657,700
- 1,952,524
- 6.4
30,610,224
小計
79,923,850
- 608,947
- 0.8
79,314,903
合計
233,716,577
- 32,562,287
-13.9
201,154,290
- 12,635,275
- 5.9
213,789,565
(4月分の上段は19日以前の分,中段は20日以後の分,下段は4月分合計を示す)
(小計は,4月20日から8月31日までの合計を示す)
(増減率は,56年度を基準として,55年度及び57年度との増減を%で示す.小数点第2位を四捨五入)
表7 【昭和55・56・57年度の月別取扱高及びその比較】
〔福井市中央卸売市場・水産物部・鮮魚〕
(単位:円)
55年度
56年-55年
増減率
56年度
56年-57年
増減率
57年度
1月
891,117
638,557,079
716
+ 23,778
- 107,190,066
- 136
+ 2.7
-16.8
-19.0
914,895
531,367,013
580
+ 39,657
- 177,274,098
- 230
+ 4.5
-25.0
-28.4
875,238
708,641,111
810
2月
1,006,519
614,357,879
610
+ 18,728
+ 7,874,469
- 4
+ 1.9
+ 1.3
- 0.7
1,025,247
622,232,348
606
- 18,386
- 98,068,709
- 84
- 1.8
-13.6
-12.2
1,043,633
720,301,057
690
3月
1,127,705
716,381,657
635
+ 106,903
+ 73,636,110
+ 4
+ 9.5
+10.3
+ 0.6
1,234,608
790,017,767
639
+ 98,642
- 70,251,632
- 118
+ 8.7
- 8.2
-15.6
1,135,966
860,269,399
757
4月
1,136,293
720,755,417
634
- 33,331
+ 53,761,080
+ 68
- 2.9
+ 7.5
+10.7
1,102,962
774,516,497
702
+ 97,825
- 13,337,796
- 82
+ 9.7
- 1.7
-10.5
1,005,137
787,854,293
784
5月
1,165,942
838,868,547
719
- 57,209
- 5,976,987
+ 32
- 4.9
- 0.7
+ 4.5
1,108,733
832,891,560
751
+ 63,875
+ 1,770,298
- 44
+ 6.1
+ 0.2
- 5.5
1,044,858
831,121,262
795
6月
977,307
680,088,835
695
+ 71,325
+ 93,073,761
+ 42
+ 7.3
+13.7
+ 6.0
1,048,632
773,162,596
737
+ 91,624
- 19,087,299
- 91
+ 9.6
- 2.4
-11.0
957,008
792,249,895
828
7月
1,024,049
784,227,624
765
- 41,653
+ 52,182,568
+ 86
- 4.1
+ 6.7
+11.2
982,396
836,410,192
851
- 9,115
- 66,474,760
- 60
- 0.9
- 7.4
- 6.6
991,511
902,884,952
911
8月
1,015,553
884,029,150
870
- 51,739
+ 36,390,304
+ 84
- 5.1
+ 4.1
+ 9.7
963,814
920,419,454
954
+ 45,784
- 9,967,680
- 59
+ 5.0
- 1.1
- 5.8
918,030
930,387,134
1,013
9月
1,121,504
732,639,994
653
- 10,555
+ 17,617,675
+ 22
- 0.9
+ 2.4
+ 3.4
1,110,949
750,257,669
675
+ 120,667
- 32,163,836
- 115
+12.2
- 4.1
-14.6
990,282
782,421,505
790
10月
1,198,600
794,316,766
662
- 19,882
+ 101,681,570
+ 98
- 1.7
+12.8
+14.8
1,178,718
895,998,336
760
+ 41,032
+ 41,033,032
+ 9
+ 3.6
+ 4.8
+ 1.2
1,137,686
854,965,304
751
11月
1,226,860
837,506,192
682
- 133,699
+ 42,657,243
+ 123
-10.9
+ 5.1
+18.0
1,093,161
880,163,435
805
- 54,936
- 50,515,711
- 6
- 4.8
- 5.4
- 0.7
1,148,097
930,679,146
811
12月
1,273,231
1,089,938,859
856
+ 209,736
+ 85,064,114
- 64
+16.5
+ 7.8
- 7.7
1,482,967
1,175,002,973
792
+ 70,908
- 120,895,105
- 126
+ 5.0
- 9.3
-13.7
1,412,059
1,295,898,078
918
小計
5,319,144
3,907,969,573
737
- 112,607
+ 229,430,726
+ 62
- 2.1
+ 5.9
+ 8.4
5,206,537
4,137,400,299
799
+ 289,993
- 107,097,237
- 67
+ 5.9
- 2.5
- 7.7
4,916,544
4,244,497,536
866
合計
13,164,680
9,331,667,999
708
+ 82,402
+ 450,771,841
+ 30
+ 0.6
+ 4.8
+ 4.2
13,247,082
9,782,439,840
738
+ 587,577
- 615,233,296
- 83
+ 4.6
- 5.9
-10.1
12,659,505
10,397,673,136
821
(上段は数量:キロ・ホン・ハチ 中段は金額:円 下段は単価:円)
(小計は,4月から8月分の合計を示す)
(増減率は,56年度を基準として,55年度及び57年度との増減を%で示す.小数点第2位を四捨五入)
表8 【昭和55・56・57年度の月別取扱高及びその比較】
〔福井市中央市場・控訴人唐沢水産分〕
(単位:円)
55年度
56年-55年
増減率
56年度
56年-57年
増減率
57年度
1月
2,677,393
不 明
不 明
不 明
0
2月
2,854,332
不 明
不 明
不 明
216,000
3月
3,352,776
不 明
不 明
不 明
823,065
4月
3,025,695
1,478,945
4,504,640
- 2,215,903
+ 1,147,133
- 1,068,770
-73.2
+77.6
-23.7
809,792
2,626,078
3,435,870
+ 809,792
+ 2,626,078
+ 3,435,870
0
0
0
5月
2,780,546
- 173,262
- 6.2
2,607,284
+ 1,126,509
+76.1
1,480,775
6月
3,719,617
+ 394,820
+10.6
4,114,437
- 3,397,458
-45.2
7,511,895
7月
5,636,037
- 4,210,384
-74.7
1,425,653
- 13,083,968
-90.2
14,509,621
8月
9,581,533
- 6,773,180
-70.7
2,808,353
- 5,401,626
-65.8
8,209,979
9月
不 明
不 明
3,591,454
- 1,815,631
-33.6
5,407,085
10月
不 明
不 明
2,604,870
- 858,723
-24.8
3,463,593
11月
不 明
不 明
4,226,581
- 1,430,056
-25.3
5,656,637
12月
不 明
不 明
1,400,854
+ 227,837
+19.4
1,173,017
小計
23,196,678
- 9,614,873
-41.4
13,581,805
- 18,130,465
-57.2
31,712,270
(4月分の上段は19日以前の分,中段は20日以後の分,下段は4月分合計を示す)
(小計は,4月20日から8月31日までの合計を示す)
(増減率は,56年度を基準として,55年度及び57年度との増減を%で示す.小数点第2位を四捨五入)
表9 【昭和55・56年度の月別取扱高及びその比較】
〔魚辻商店・控訴人唐沢水産分〕
(単位:円)
55年度
56年-55年
増減率
56年度
4月
1,899,923
554,311
2,454,234
- 1,308,863
- 288,311
- 1,597,174
-68.9
-52.0
-65.1
591,060
266,000
857,060
5月
1,237,975
- 873,575
-70.6
364,400
6月
2,385,392
- 1,307,262
-54.8
1,078,130
7月
3,906,749
- 1,091,592
-27.9
2,815,157
8月
5,050,215
+ 976,635
+19.3
6,026,850
合計
13,134,642
- 2,584,105
-19.7
10,550,537
(4月分の上段は19日以前の分,中段は20日以後の分,下段は4月分合計を示す)
(合計欄は4月20日から8月31日までの合計を示す)
(増減率は,56年度を基準として,55年度及び57年度との増減を%で示す.小数点第2位を四捨五入)
表10 【昭和55・56年度の月別取扱高及びその比較】
〔魚岩商店・控訴人唐沢水産分〕
(単位:円)
55年度
56年-55年
増減率
56年度
4月
1,133,470
464,280
1,597,750
- 260,330
+ 23,870
- 236,460
-23.0
+ 5.1
-14.8
873,140
488,150
1,361,290
5月
1,263,240
+ 24,490
+ 1.9
1,287,730
6月
1,509,430
- 125,370
- 8.3
1,384,060
7月
1,622,180
- 61,750
- 3.8
1,560,430
8月
1,679,150
+ 37,140
+ 2.2
1,716,290
合計
6,538,280
- 101,620
- 1.6
6,436,660
(4月分の上段は19日以前の分,中段は20日以後の分,下段は4月分合計を示す)
(合計欄は4月20日から8月31日までの合計を示す)
(増減率は,56年度を基準として,55年度及び57年度との増減を%で示す.小数点第2位を四捨五入)
表11 【昭和55・56・57年度の月別取扱高及びその比較】
〔釣屋商店・控訴人橋爪分〕
(単位:円)
55年度
56年-55年
増減率
56年度
56年-57年
増減率
57年度
4月
603,000
349,390
952,390
- 42,430
- 230,590
- 273,020
- 7.0
-66.0
-28.7
560,570
118,800
679,370
- 377,440
- 255,900
- 633,340
-40.2
-68.3
-48.2
938,010
374,700
1,312,710
5月
1,403,770
- 1,147,795
-81.8
255,975
- 669,225
-72.3
925,200
6月
1,263,800
- 620,100
-49.1
643,700
- 414,265
-39.2
1,057,965
7月
1,133,100
- 405,900
-35.8
727,200
- 432,240
-37.3
1,159,440
8月
712,200
- 47,400
- 6.7
664,800
+ 37,160
+ 5.9
627,640
合計
4,862,260
- 2,451,785
-50.4
2,410,475
- 1,734,470
-41.8
4,144,945
(4月分の上段は19日以前の分,中段は20日以後の分,下段は4月分の合計を示す)
(合計欄は,4月20日から8月31日までの合計を示す)
(増減率は,56年度を基準として,55年度及び57年度との増減を%で示す.小数点第2位を四捨五入)
表12 【昭和55・56・57年度の月別取扱高及びその比較】
〔川口水産・控訴人橋爪分〕
(単位:円)
55年度
56年-55年
増減率
56年度
56年-57年
増減率
57年度
4月
709,400
213,000
922,400
+ 387,000
- 213,000
+ 174,000
+54.6
-100.0
+18.9
1,096,400
0
1,096,400
+ 301,800
- 233,000
+ 68,800
+38.0
-100.0
+ 6.7
794,600
233,000
1,027,600
5月
1,552,862
- 1,458,862
-93.9
94,000
- 1,466,700
-94.0
1,560,700
6月
1,668,590
- 1,553,590
-93.1
115,000
- 1,098,000
-90.5
1,213,000
7月
1,539,400
- 1,290,400
-83.8
249,000
- 1,267,500
-83.6
1,516,500
8月
445,900
+ 225,370
+50.5
671,270
- 1,303,630
-66.0
1,974,900
合計
5,419,752
- 4,290,482
-79.2
1,129,270
- 5,368,830
-82.6
6,498,100
(4月分の上段は19日以前の分,中段は20日以後の分,下段は4月分の合計を示す)
(合計欄は,4月20日から8月31日までの合計を示す)
(増減率は,56年度を基準として,55年度及び57年度との増減を%で示す.小数点第2位を四捨五入)
表13 【昭和55・56・57年度の月別取扱高及びその比較】
〔魚新商店・控訴人橋爪分〕
(単位:円)
55年度
56年-55年
増減率
56年度
56年-57年
増減率
57年度
4月
675,960
329,885
1,005,845
+ 123,000
- 311,685
- 188,685
+18.2
-94.5
-18.8
798,960
18,200
817,160
- 614,720
- 633,790
- 1,248,510
-43.5
-97.2
-60.4
1,413,680
651,990
2,065,670
5月
1,651,825
- 1,584,105
-96.9
67,720
- 1,745,250
-96.3
1,812,970
6月
334,295
- 243,325
-72.8
90,970
- 976,210
-91.5
1,067,180
7月
971,755
- 884,105
-91.0
87,650
- 1,104,359
-92.6
1,192,009
8月
1,045,580
- 594,135
-56.8
451,445
- 707,320
-61.0
1,158,765
合計
4,333,340
- 3,617,355
-83.5
715,985
- 5,166,929
-87.8
5,882,914
(4月分の上段は19日以前の分,中段は20日以後の分,下段は4月分の合計を示す)
(合計欄は,4月20日から8月31日までの合計を示す)
(増減率は,56年度を基準として,55年度及び57年度との増減を%で示す.小数点第2位を四捨五入)
別紙別添1~3<省略>